2011年7月9日土曜日

声に抑揚がない棒読み営業マン

わたしは、気が向かないと営業マンの訪問を受けない。
だから、アポもなしにいきなり来ても必ず断ることにしている。相手の都合も確かめずに来るなどというのは、その時点で営業失格である。

だから、電話アポが最初のきっかけとなる。
しかし、その電話アポにしたって、受ける気になるものとそうならないものがある。
まず、どこか別の会社(又はアルバイト)に電話アポだけを委託しているような場合である。こういう場合は、たまにわからないこともあるが、大抵の場合はすぐにわかる。

電話アポを外注がやっている場合には、以下の特徴がある。

・非常に機械的で型にはまった話し方をする
・こちらの返事に対して、何かをチェックしているかのように「ハイ」と小さく確認の返事が入る
・若い人が多い

また、本人がかけてきたとしても、そのときにその内容に興味を持てなかったり、需要がちょうどなければ、わざわざ会おうと思わない。
そのときに会わなくても、需要が喚起された場合には、こちらから該当する会社を調べて電話をかけるのだから、そもそも挨拶だけの訪問などしてもらわなくてもいいのである。
だから、営業マンに会ったとしても、その場で何かしらのものを売りつけよう、商売の話にもっていこうとされても迷惑なのだ。
必要なものは何かと聞きだそうとしたり、ちょっと何かを言っただけで、次回それを調べて持ってきます、などと言われても、余計に時間がとられるだけなので、困るのである。買う気がないのだから。

そんなわけで、電話アポ自体も、興味が沸いたときだけしか受け付けない。
どういうときに興味がわくかというと、電話の向こうの相手が、とても誠実そうなときである。こういう人は、会ったとしても矢鱈とものを売りつけようとしてこない。本当に挨拶をして、以後お見知りおきを、という感覚なのである。

先日、こちらの興味を違った意味で引いた営業マンがいた。
その人は、女性でどうやら新人とのことだった。
電話口で、要件を完全なる棒読みで伝えてきたのである。
おそらく、言うことを忘れまいとして、紙に書いたのであろう。しかし、普通は、それを読んでいたとしても、自分の頭の中で理解した上で読み上げるので、抑揚が自然とつくものである。棒読みということは、自分でも今話していることがよくわかっていない、ただ紙に書かれている文字を一文字ずつ発声しているだけの状態だということだ。
相手の言い分は、「以前(数年前)に他の者が営業に来たが、自分は今年入社したばかりの新人なので、会って挨拶をしたい」ということである。
あまりの棒読みに言葉を失ったわたしは、会っても時間の無駄だろうと思った。そして、新人で棒読みのあなたに会うことで、わたしにどんなメリットがあるのか、という質問をしてやりたい気持ちになった。が、意地悪なことをしても仕方がないのでやめておいた。
変わりに、その意味を込めて、何のために来るのかもう一度聞いてみた。
すると、新人なので挨拶したい、と繰り返すばかり。そうである。そもそも紙に書いたことを棒読みするような人に、アドリブで別のことを話す能力などないのである。
だが、ここで逆に興味が沸いてしまった。この人と実際に会って話をしたときに、どれだけこの人は話をすることができるのだろうか?と。そして、翌日に会うことにした。

翌日、その営業マンはやってきた。
しかし、一人ではなく二人であった。もう一人は代表取締役の肩書きであった。こちらの人は物腰も穏やかで話しも普通。IT系の開発会社で、おそらくこの人もエンジニア畑なのだろう、突っ込んだ話にも対応できるので、話はスムーズである。

商社系の営業マンに多いのだが、技術的な知識を全く持ち合わせていないため、少し突っ込んだ話をされると、たちまち聞いてきますだの、技術の者を連れてきますだのといって、こちらの時間を余計に奪う人がいるが、これはかなりの勉強不足といっていい。技術屋を連れてこなければ顧客を獲得できないのであれば、最早営業マンではない。そんなことは誰でもできるのである。営業マンであるからには、自分ひとりで契約をかちとる程度のプライドはもってもらいたい。

その新人営業マンは、会社の概要を説明するといって、パワーポイントの出力用紙のような会社案内をこちらに向けて、一ページずつ説明し始めた。
しかし、その説明もやはり拙い。何しろ、そのページに書かれている文字を読んでいるだけで、なんらかの情報をプラスしてくれるわけでもないのだから。こちらも話すこともないので、はい、と相槌を打つだけであった。
それが終わると、取締役の人が「すみませんでした」と苦笑いしながら言った。この拙さ、そして、それを黙して聞くわたしを見て、思わずそういったのであろうか。

このとき、実は少し聞いてみたい案件をかかえていたので、その話をその取締役にしてみた。すると、話は進み、ちょっとした調べごとをしてそれを次回教えてくれるということになった。もし、これがこの新人営業マンだけだったら、何のことか分からずに持ち帰り、その答えも適当なものになりそうなので、聞いても仕方がないか、と思ったことだろう。

この人の問題は、使命感がないことだろう。
自分が何をしにその会社に入ったのか、自分が今していることは何なのか。
相手の時間を奪ってまで話したい内容を持っているのか。
会ってみて、意味はなかった、損した、忙しいのに時間が勿体無かったと相手に思わせるような訪問をすることにならないか。
そういったことを、事前に考えていないのではないか。
このとき7月である。4月に入社したということは、3か月経っているのである。
3か月では、そういう考えに至ることは難しいのだろうか。しかし、電話営業を繰り返しているのであれば、せめて棒読みは卒業してもいい時期ではないだろうか。3ヶ月もあれば、そろそろ電話営業のときに言うべきことは覚えられるだろう。3ヶ月も何をしていたのだろうかと思ってしまう。
この人、今回のことでうまくいったと自信をつけて、リラックスして電話営業ができるようになればいいのだけれど、恐らく1年かそこらで辞めてしまうのではないかと思う。

0 件のコメント:

コメントを投稿