2010年2月14日日曜日

1Q84年 ― 村上春樹

 これまで村上春樹を読んだことはなかった。名前はもちろん知っているし、ベストセラーを何冊も書いているらしいことも聞いたことはある。が、昔は小説に興味がなかったので買っていなかったのだ。これは、村上春樹に限らない。

 1Q84は、ジョージ・オーウェルの「1984年」を何らかの形でモチーフにしているらしいことも小耳にはさんだ。村上春樹である上に、「1984年」になぞらえた題名をつけたときたら、ちょっとした話題にはなる。
 ある日、その本を付き合っている人が持っているので、借りることにした。このごろはジャンルを問わず本を読むのが好きになってきているので、話題作なら読んでみたい。

 目次で、各章の見出しをざっと読むと、「ビッグブラザー」という文字が目に入った。あ、やっぱり「1984年」に近い内容なんだ。と思った。
 しかし、読んでみると全く違うストーリーだった。青豆という変わった苗字の女性と、天吾という男性のストーリーが交互に進んで行き、やがて一つに交わる、という内容だ。
 登場人物がなにやら変わっていて、これはいわゆるアニメの“萌えキャラ”というやつではないのか・・・?と思ったりしていたのだけど、それにもちゃんと理由があった。
 一風変わった世界観で、現実と非現実が交わっていき、その中におぞましい事件が絡んでくる、といった内容。
 これが村上春樹ワールドなのかと思ったら、貸してくれた彼女にしてみれば、「これまでの著作にしてみたら、最も現実的な話になっている」とのことだった。今までの著作が気になった。どれだけ飛ばした内容なのだろうか。

 文章はとても読みやすいし、ストーリー展開も面白い。読み始めたら途中でやめるのがためらわれる。あと1章だけ読んだらほかの事をしよう、と思っても、その1章が30ページ程度なので、もう1章くらい・・・と、つい読んでしまう。ストーリーの続きが気になるのだ。
 はなから飛ばしたストーリーの青豆と、徐々に巻き込まれていく天吾の日常が出会ったとき、起こるのは共闘か敵対か。中学生程度でも普通に楽しめる内容だし、むしろ子供向けか?と思ってしまうようなストーリーに、やけに現実的な事件と性的描写が絡んでくる。大人向けのエッセンスを子供向けの展開に盛り込んだというか、アダルトな雰囲気を誰にでもわかりやすく描いたというか、この絶妙なバランス感覚が、村上春樹の真骨頂なのだろうか。
 今後、村上春樹のほかの本を読んで、そこら辺を考えてみたい。