2010年6月3日木曜日

見た目が汚くて話す内容がいい加減な営業マン

 最初に断っておくが、私は営業など僅かな期間しかやったことはないし、その営業っぷりも惨憺たるものだった。普段、営業マンの訪問を受ける立場にいる人間は、私のようにただ受身でいると、いざ自分が営業をやることになったときに、何もできない。

営業を受ける立場を利用する

 だから、自分が営業を受ける立場にいるのであれば、その立場を最大限に利用したほうがいい。すなわち、よい営業と悪い営業を見極めて、分析するのである。そして、自分がもし営業をする立場になったら、どのように振舞えばいいのかを学ぶのである。

 そして営業をするときの最大の注意点は、ただ1つ。相手は、多くの営業マンを見てきている、いわば、営業を受けるスペシャリストである。だから、あなたは多くの営業マンと比較されていることになる。うわべだけで不勉強、約束を守らない、だらしない格好、というような姿勢で臨めば、それは必ず看破される。「このくらいなら大丈夫だろう」なんて甘い考えは捨てることである。

初見でダメと思わせるのはダメ

 先日会った酷い営業マンの話である。その営業マンとは電話のアポによって会うことになった。つい電話のアポで、何の問題もない話し方だったので、いいですよと答えたところ、当日は別の者がうかがいます、と言われ、しまったと思った。
 別の者が来る、と答えるアポ電話というのは、アポだけをアウトソーシングしているお金の潤沢な企業である。そして、そういう企業は社員を沢山とるけどたくさん辞める。社員が足りないので、簡単に入社させる。すると、当然モチベーションの低い社員が中には混じっている。多ければ多いほど、混じる確率が高くなる。
 いまさら断れないので、そのままアポを受け付けてしまった。

 営業マンがやってきた当日、初見でこれはダメかもと思った。見た目である。 顔が吹き出物だらけで、それがとても汚い。見苦しいといってもいい。確かに、それは体質であることもあるし、それだけで人格を否定してしまうようなことはすべきではない。そう思って様子を見ることにする。
 しかし、プロフェッショナルであろうと思えば、見た目にも気を使ってほしい。皮膚のケアをしてなるべく綺麗に保とうという努力ができれば最高だ。
 相手に不快感を与えないというのは基本である。

2人しかいないのに、浮く

 話をすると、どうやらこの人、最初に関係のない話をして相手との雰囲気をよくする、という営業の基本をやろうとしているようだった。なにやら本当にどうでもいい話をしだした。そして、それがすぐに終わるのかなと思ったら、やたら長い。何でこんな話に付き合わなければならないのかなと疑問を感じてしまうほどだ。
 それも、何かこちらとの温度差があるという感じで、こっちがその話についていこうという気にならないのである。
 営業が不得意な人にありがちなのだが、何とか自分のペースに持って行こうと必死になりすぎるあまり、自分なりの営業の型を自分で作ってしまうのである。何かのときにうまくいったと感じたのかもしれない。が、それが万事どの場面でも同じ効果をもたらすのは難しい。アドリブができない人はこういうとき、浮くのである。二人しかいないのに。

 やがて商品の説明に移る。こっちとしては、一通り話を聞くだけのつもりで接しているので、何かに困っているわけでもない。もし、何かあったら連絡をとるうちの一社、という扱いである。
 その商品の説明を色々と聞いているのだが、こちらの興味を引くものは特になかった。値段が高すぎるというのもある。こういうとき、会社の規模を考えて、かってもらえそうな商材を幾つか用意するのがいいと思う。会社が、今期はこれを売ってくださいといったものだけ持ってきても、そう簡単に食いつく相手などいない。

向いていないことを自己判断できるようになろう

 そして、商品を売るのであれば、それを自分で使ってみる、触れてみるくらいの事はしておいてほしい。実物を見たこともないものを売られても、こちらの質問に答えることはできないだろうし、やはりどれだけ便利なものなのかという迫力が感じられない。しばらく商材の説明をしていたその営業マンは衝撃の一言を言った。

「ま、うちの会社では使っていないんですけどね。」

 このセリフは禁句であろう。このときの商材はコンピュータのソフトウェアだったのだが、自社で導入していないものを他人に売りつけようとしても、信用してもらえない。自社で使うほど便利なものではないということなのだな、と思われてしまう。

 もはやこれまでと思い、後は向こうが話してくるまで、こちらから口を開くのはやめてしまった。向こうが何かを言っても、一言で返してあまり反応しない。いわゆるのれんに腕押しの態度である。そして、その営業マンがパンフレットなどをまとめて帰る準備をし始めたときに、ふと気になって一つ質問してみた。

「今の会社で働いてどのくらいですか」

すると、2年と答えた。そして、その後すぐに、前の会社でも同じような仕事を5年ほどしていたと。つまり7年営業マンをやっているということである。
 社会人になって7年はあっという間であるが、7年経ってものにならないのであれば、どうやら向いていないと諦めた方がいいのではないか。
 前の会社が学校を卒業して初めての会社だとすると、大体30歳前後であろうか。などと考えていたら、向こうもこちらがこの会社でずっと働いているのかと聞いてきたので、そうです。と一言。こういう相手にはこちらから特別な情報を与えるつもりにはならない。余計に話を引き伸ばされたくないし、あまり相手にされていないな、ということを感じてもらえれば、次回こようとは思わないだろう。

見た目とやる気と物腰に気を遣おう

 この営業マンの困った点は、
・ 身だしなみ
・ 姿勢
・ 態度
の3点である。

 すなわち、見た目とやる気と物腰、これらが備わっていなかった。しかし、これらはもって生まれたものである必要はなく、後から十分身につけられるものなのだから、単純に努力が足りないのだろう。

 まず、客観的に自分がどう見られているかを姿見で確かめよう。スーツと靴に若干のお金をかける。デパートの年末セールなどにいけば、比較的いいスーツが安く手に入る。オーダーメイドが無理なら、イージーオーダーでいい。若ければスラックスはノータックでタイトにはき、革靴は週末に磨いてピカピカにしておく。風呂には毎日入り、歯も磨く。フケは厳禁、髪型はちゃんと固めよう。
 もし皮膚に自信がなければエステに行くという方法もある。そこまでできれば相当なものである。

 次に、やる気を出そう。やる気を出すのは簡単。頭を使えばいいのである。自分がどのように行動すれば、訪問先に気に入られるのだろうかを考えて準備をすればいいだけである。準備をすればしただけ、相手の印象はよくなると考えよう。ポイントは相手の立場に立つことだ。
訪問が終わったら、振り返ってどうだったかを考える。相手の反応が悪いと思ったら改善すべき点に思いをめぐらし、反応がよければよかった点を大事にする。

 最後に物腰。これは話し方、目つき、表情、動作などである。まず、にらむような目つきはダメ。笑わないのもダメ。動作は常に丁寧に動くことを意識する。「ついで」を感じさせるような動作は印象が悪い。たとえば、歩いているときにお辞儀をするのであれば、半身でお辞儀をするのではなく、必ず立ち止まって正面を向いてお辞儀をする、というように。
 話し方を客観的に感じるのは難しい。そういうときは、普段から人の輪の中に入っていくように振舞うのがいい。社会人サークルや何か習い事をするのでもいい、とにかく何かのコミュニティに参加して、人当たりをよくするのである。

真剣に仕事をしてみよう

 このように、自分が今している仕事に対して、全身全霊を傾けることができれば、少なからず仕事は楽しくなる方向に向かう。就業時間が終わったら、後は完全にプライベートな時間で、仕事が半ばであってもおしまい、なんていう態度で日々仕事をしていたら、いつまで経っても半人前のままである。怖いのは、それを自分では気づかないし、誰も教えてくれないことだ。これでいいんだ、と思っているうちは、上達しない。入社時よりは少しは上達するかもしれないけど、同じことをするための無駄な動きが減るだけで、プラスアルファは何もない。高が知れている。
 何をするのがいいのかわからなくてもいい。まずは、仕事をする上で、今の自分に足りないものは何かを考えよう。考えるというのはとても大事なことだ。頭を使って初めて上達への道が開けるのである。自分に足りないものを、自分なりに考えたのならば、それを補うにはどうすればいいのかを考えよう。できる、できないは後回しで、とにかく何が必要なのかをすべて出してみる。そして、そのうち、今の自分でもすぐにとりかかれそうなもの、今は無理だけど何かが変わればやれそうなもの、一生かかっても自分には無理なものにわけてみよう。できそうなことから始めてみるのである。
 軌道修正も必要だ。やっていることが、どうも今の自分に必要なことではないように感じたら、一度やめてみて、他の方法を考えるのである。人生とは、軌道修正の連続のようなものである。

 同じことを、最低でも1年続けてみよう。できれば3年がいい。3年同じことを毎日続けることができれば、その道のプロに近くなる。それでもモノにならなければ、それは向いていないのだから、諦めよう。ただし、必ず毎日続けること。いい加減にやるようなことがあれば、向いているかどうかは判断できない。

 こうやって、自分の特性、苦手、得意な点を把握して、得意なものを伸ばしていけば、今よりは楽しい人生になることは間違いない。スタートしたばかりの社会人の場合、苦手なものは多くあるし、得意なものだけを伸ばすにはもったいない。この時期は、苦手なものを減らし、得意なものを伸ばす、という2つの面から努力した方が、今後のためになるだろう。