2010年2月16日火曜日

おこりんぼさびしんぼ ― 山城新伍

 以前、山城新伍が亡くなったという報道を聞いた。氏の出ていた映画などはあまり観た覚えもなく、テレビでもトーク番組で昔見たことがあるかな、という程度だった。
 ニュースによると、糖尿病を患ってから表舞台に出なくなり晩年は老人ホームで一人淋しく亡くなった、とのことだった。
 そんなニュースを聞いた会社の後輩のA君は、山城新伍に興味を持ち追悼の意も込めて本書を買ったのだそうだ。わたしは彼から「面白いから読んでみてください」と借りることになった。

 内容は、若山冨三郎、勝新太郎の二人のエピソードを中心に書いたもので、山城新伍氏が尊敬し、芸事の影響を受けたのはあとにも先にもこの二人だけと公言している。私は若山冨三郎という人物を知らなかったが、勝新太郎の兄だそうだ。
 勝新太郎といえば代表作、座頭市で有名だ。そして、パンツに麻薬を隠していて逮捕になったり、癌を患ったあとの退院会見で堂々とタバコを吸うなど、豪快で変わった人だなという印象があったのだが、どちらかというと優しい人柄だったようだ。
 山城新伍氏は、勝新太郎よりも若山冨三郎に惚れ込んでいたのかなという書きっぷりで、主に若山冨三郎のエピソードである。
 この若山冨三郎、昔ながらの頑固で恥ずかしがりやで男気があり、人情に厚いという、とてもわかりやすい性格だったようだ。そして、山城新伍氏は、彼につきそい、親分・子分のような関係で親しい関係を築いていたようだった。内容には、若山冨三郎や勝新太郎、中村玉緒などの面白い話が紹介される。本書から得られるものというのは特にないけれど、俳優や芸人は映像で見るよりも、自ら書いた文章を読んだ方がその人となりが何となく理解できる気がした。

 冒頭に書かれていた文章が印象的だった。日本の役者は年とともに忘れ去られてしまい、若手の人気俳優ばかりが第一線で活躍できる現状を憂い、妬み、そして同時にそれを諦めにも似た感情で納得しているかのようだった。
 役者・芸人は水商売である。それを体現したかのような栄枯盛衰を見せた人生を送った山城新伍氏に追悼の意を表す。

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